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ただの日記。たぶん。

玻璃の天-あまりに北村薫的な。

玻璃の天 (文春文庫)

玻璃の天 (文春文庫)

ベッキーさんシリーズの第二弾がめでたく文庫化。
や、もう「街の灯」からそうですけど、北村薫のデビュー作である「空飛ぶ馬」に始まる「円紫師匠と私」シリーズをなぜか彷彿とさせるんですね。
空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

ミステリというジャンルが被っているのはもちろんのこと、ベッキーさんシリーズの「花村英子」って円紫師匠シリーズの「私」に似ているなぁと思ったり。
円紫師匠とベッキーさんの立ち位置が近いと感じます*1
登場人物に注がれる暖かい視線、そしてさりげない割に緻密な謎、その空気感が北村薫の持ち味という奴だと勝手に思っています。その意味でベッキーさんシリーズはまさに「北村薫の真骨頂」といったところでしょうか。

さて「玻璃の天」は三篇からなる連作短編集ですが、底に流れるのは「ベッキーさんの過去」。
「幻の橋」でヒントが与えられ、「玻璃の天」で明らかになるベッキーさんの過去は、「自由」を考える英子とつながる重要なテーマです。

舞台は昭和九年。まだ、英子の目に映る東京は平和で美しい。恥ずかしながらそういう「昭和」をよく知らなかったので、文化史としてもためになります。
ただ、時代は確実に不穏な影をちらつかせている、その描写も目立ちます。
こうして最終巻「鷺と雪」に続く…となるともう、読みたくてたまらない。
しかし、いくらなんでも文庫はまだですよね…。

*1:ただし、円紫師匠が探偵役を務めるのに対し、ベッキーさんは「主人公に示唆を与える」役回りですが