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ただの日記。たぶん。

拝金―なぜ小説なんだ。

拝金

拝金

ホリエモンこと堀江貴文氏の処女小説であり、彼がtwitterで感想をRTしまくっているあの本。
RTの*1感想とamazonの評価が好評なので買って読んでみました。

結論「面白くなかった」

世間の高評価を足蹴にするつもりはないんですが、ある種の先入観を持って読んでしまったせいか、小説としての面白味はまったく感じられないと言わざるを得ませんでした。
「一気に読めた」という意見をかなり見ましたが、確かに一気に読めました。
ただ、冒頭からすでに引き込まれるには世界が飛びすぎてました。
文体が読みやすく、軽くしているのもわかったのですが、余計につくりものめいた印象をうけました。
フィクションとして書くからこそ、リアルさが求められると思うのですが、最初から最後まで「小説を読んでいるな」という感覚の中で読み終えました。

*ここから先、若干内容に触れます

2人の「ホリエモン

この小説は帯にも書かれている通りいわゆる「ライブドア事件」が題材であり、モデルとなる人物がかなり露骨に描かれています*2。そして堀江氏自身は「操る側」と「操られる側」の2つのキャラクターに分離しています。
そしてこの「操る側」のキャラクター造形が徹底的に嘘くさい。もうね、虚構なんだから割り切れよといわれても…。あと、操る動機があまりにも…と(私は)思いました。フィクションだからこそとれた手法がうまくいってないように思えます。

なぜ小説なのか

読みながら思ったことは、
「彼はなぜこれを小説で書かねばならなかったのだろう?」
ということです。
フィクションであるとはいえ実際の事件を題材にし、彼自身の起業や経営に対する考え方が盛り込まれています*3。ここまで書けるならむしろノンフィクションで書けばよかったのではないかと思えてなりません。「徹底抗戦」は多少筆が滑っているとはいえ悪くなかったので。
堀江氏はあとがきにこう記します。

(前略)でも僕は自分の感じた気持ちをできるだけ多くの人と共感したかった。
あれ、すげえんだぜ。
それをなんとか、みんなに知ってほしかった。
じゃあ、どうするか?僕が体験した世界を読者に追体験してもらう、これが一番、簡単で確実な方法だ。
だから小説を書いてみることにしました。

堀江貴文「拝金」268p

あくまで個人的意見ですが、ノンフィクションとして描いた方が追体験できたと思います。
おそらくフィクションでなければ書けないこともたくさんあったでしょう*4
しかし追体験するには、フィクションの香りが深すぎました。

*1:逆に、直接感想をツイートしているひとは見かけなかった

*2:一読すれば名前でそれとわかります

*3:その部分はなるほどと思える

*4:おそらく小説として書いた理由はそれが一番大きかったのではないかと思う