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ただの日記。たぶん。

幸福-向田邦子の描く世界

幸福―向田邦子シナリオ集〈3〉 (岩波現代文庫)

幸福―向田邦子シナリオ集〈3〉 (岩波現代文庫)

向田邦子シナリオ集シリーズの3巻目。
大分前に購入して積読状態でした。

この作品は彼女が直木賞を受賞した頃に書かれた作品。*1
向田作品は人間関係がいつも微妙に複雑なのですが、これはより複雑。
兄が捨てた恋人との一夜の思い出を胸に秘めて生きる弟。(超無口)
その弟の今の恋人は、兄の元恋人の妹。
そしてそんな弟に気をもむ、弟の妹。

ああなんてややこしい。

要するに、微妙な三角関係だったり、兄弟の確執だったり、さまざまな人間関係を一気に詰め込んだ作品。

今だとジェットコースター的昼ドラマに仕上がってしまいそうなのに、なぜかこれをほんのりと色っぽく、ときにおかしく描いてしまうっていうのがまさに向田邦子
直接的な「色気」描写は一切ないのに「ネクタイについた口紅」とかで表現してしまう。
言葉の使い方がものすごくうまい人なんですね。
今、こういう作品が見たいな…とつくづく思います。

*1:ちなみに向田邦子と同時に直木賞を受賞したのはかの志茂田景樹。彼女の受賞は選考委員の山口瞳が凄い粘ったらしい